[良い営業]

 今の季節、来年度入園希望の方の来園が毎日のようにあります。初対面の大人及び012歳児の方々と、在園児との出会いがあるわけです。

 ここで、不思議なことがあります。こういった来園者が無い日は、大抵、泣いて登園して来たり、登園するなりおもちゃの取り合いをしたり、保育士を独り占めしたりといった、不安定でもあり自分勝手でもある行動を園児たちは起こすように思うのです。

 しかし、何故か初対面の方が見えると、そういった負のエネルギーのようなものが姿を消すのです。普段あんなに取り合いしているおもちゃを、初対面のお友だちに優しく持ってきて渡したり、普段たたいたり引っ張り合ったりしている手を、笑顔を振りまいてハイタッチするために用いているのです。012歳児がですよ。私たちはこういう現象を「今日の子どもたちは良い営業してるね」と言って面白がっています。

 実は昨日、年1度の保育園監査がありまして、私とままさんのみならず、スタッフ全員緊張の脂汗を流していたのです。そういう時に限ってお休みする子なく登園してくるものです。さらに休めばいいのにそういう日に限って風邪ひきの子が多いです。マーフィーの法則と申しましょうか、子どもたちはいつ不平不満で爆発してもおかしくない状況でした。しかし、子どもたちは何と破綻せずにおりこうさんに営業してくださったのです。まるで演じるように・・・少なくとも私にはそう見えました。

 私は、こういった子どもたちの姿を見るたびに、「人間の心というのは、自分のためだけに生きるよりも、誰かの為に生きる方が、喜びも大きいし、生きるエネルギーがみなぎるようにできているのだな」と思います。もし神さまが実際にいて、人間のそういう性質まで作り込んだのだとしたら、これは本当に感謝すべき事ではないかと思います。

 楽しい人生というのは、自分が何かをすることで、人の役に立てる人生です。そんなことを子どもたちに教わったようです。

 で、お客さまが帰った後、子どもたちは通常の姿を現しまして、あっちで泣く声、こっちで怒る声です。「元に戻って良かった」

なかよく遊ぶ子どもたち

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